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Astar:オンチェーンガバナンス

コレクティブとしてのAstarへの進化の第一歩として、中央集権的なガバナンスモデルから、より分散化されたシステムへの移行を進めています。Polkadotエコシステム内の他のパラチェーンでも採用されているガバナンスモデルを参考にした「Governance v1」を採用しガバナンスの段階的な分散化を目指します。

この新しいガバナンスシステムにより、コミュニティとASTRホルダーがガバナンスアクティビティにより深く関与できるようになります。これによって、より民主的で堅牢なエコシステムが実現されます。 Governance v1への移行後も、Astar Foundationが引き続きAstar Networkの開発を主導し、Astarエコシステム全体の成長を促進する中心的な役割を担います。

Overview

Governance v1は、トークンホルダーが公平かつ効果的にネットワークの方向性を決定できる仕組みを提供するという基本理念をもとに設計されており、完全なオンチェーンガバナンスへ移行するための第一歩となる取り組みです。 ガバナンスの分散化は、Astarがコレクティブへと進化する上で必要不可欠であり、ASTRのユーティリティをSoneiumやSuperchainエコシステムに拡大していく上でも重要な役割を担います。

主にStake-weighted Referenda(ステークウェイト型投票)、Adaptive Quorum Biasing(適応的クォーラムバイアス)、Batch Approval Voting(バッチ承認投票)などを採用することで、トークンホルダーやカウンシルが連携してプロトコルの方向性を決定していくことが可能になります。 ガバナンスのプロポーザルは、トークンホルダー(パブリック)またはカウンシルから発案されます。パブリックプロポーザルはプロポーザルキューに追加され、最も支持を集めたものがReferendum(レファレンダム)として投票に進みます。一方、トレジャリープロポーザルやカウンシルプロポーザルは別の審査プロセスを経ます。

このガバナンスプロセスは、トークンホルダーが直接投票を行うか、あるいは投票権を他者に委任する柔軟性を提供します。また、すべての決定はエンアクトメント期間(施行までの猶予期間)を経て実行され、透明性と適応性を兼ね備えた仕組みとなっています。

Stake-weighted Referenda(ステークウェイト型投票)

トークンホルダーが保有するASTRの量とロック期間に基づいて投票の影響力が決定される仕組み。

Adaptive Quorum Biasing(適応的クォーラムバイアス)

提案の種類や影響に応じて必要な投票率が調整される柔軟なクォーラム設定の方式。

Batch Approval Voting(バッチ承認投票)

トークンホルダーが複数の提案を一度に投票できる効率的な投票プロセス。

これらの機能を通じて、トークンホルダーとカウンシルが協力しながら、プロトコルの方向性を民主的かつ効果的に形成することが可能になります。

Astarのガバナンスは、包括性と使いやすさを兼ね備えた仕組みを提供し、誰もが簡単に参加できるように設計されています。トークンホルダーがガバナンスに参加するための主要なツールは以下の通りです:

Polkadot.js.org (ウォレットのPolkadot jsとは別物) 開発者向けに設計されたガバナンス操作向けのツール。

Subsquare 投票プロセスやその他のガバナンス関連操作を簡略化する、直感的なガバナンスプラットフォーム。

最初のローンチピリオドは2024年12月2日に行われる、オンチェーンガバナンスを導入するランタイムアップグレードが実施された後に開始される予定です。

Astar Governance Process

補足: Governance v1は、Polkadotの初期ガバナンスモデルを基にしており、現在のOpenGovモデルとは異なります。このモデルは、Polkadotエコシステム内の他のパラチェーンで成功を収めており、メインカウンシルとテクニカルコミッティーによる監視を基盤とした、一定の分散性を実現しています。

このモデルは、複数のエコシステムで実績があるだけでなく、中央集権制と分散性を兼ね備えており、完全な分散化を目指す過程において最適な選択肢となっています。

専門用語とパラメーター

Proposal(プロポーザル) コミュニティメンバーが提出することができるエコシステムへの提案。十分な賛同を得ることでレファレンダムとなり、投票により提案内容の採用の可否が決定される。

Endorsing Proposals(プロポーザルへの賛同) プロポーザルの提出者は、プロポーザルを提出する際に一定量のASTRをロックする必要がある。また、既出のプロポーザルに対して賛同したい場合、第三者も同様にASTRをロックすることができる。新しいVoting Periodが開始するタイミングでもっとも多くの賛同(ロックされたASTR)を集めたプロポーザルが次のレファレンダムとなる。

Referendum(レファレンダム) プロポーザルが十分な賛同を得ることでレファレンダム(投票の議題)となる。

Voting(投票) ステークホルダーがレファレンダムが可決されるべきか否かを決定するプロセス。投票は、各ステークホルダーアカウントが保有するASTRの量と、そのロック期間に基づいて比重が決定される。

Motions(モーション) 一般的なプロポーザルとは違い、カウンシルが審議する「レファレンダム」のこと。カウンシルは、メイントレジャリーやコミュニティトレジャリーに対するプロポーザルを審議する。

Launch Period(ローンチ期間) プロポーザルが提出され、トークンホルダーにより支持される、またはメインカウンシルが受けたプロポーザルを発議するまでの時間枠のこと。ローンチ期間は7日に設定されている。

Voting Period(投票期間) トークンホルダーがレファレンダム設定されている議題に対し投票できる期間のこと。投票期間は7日に設定されています。※ガバナンス文脈での投票期間(Voting Period)とdApp StakingのVoting (Sub)Periodは別物なので要注意。

Enactment Period(エンアクトメント期間) レファレンダムが可決された場合、プロポーザルがオンチェーンで実際に実行されるまでの猶予期間のこと。エンアクトメント期間は2日に設定されている。

Astar Proposal Timeline

補足: ローンチ期間の終了時には、メインカウンシルからの外部プロポーザルがレファレンダムとして優先的に進められます。外部プロポーザルがキューに存在しない場合、最も多くの支持(エンドース)を集めたパブリックプロポーザルがレファレンダムに昇格されます。

ASTRホルダーのガバナンスへの参加方法

ASTRホルダーは、ガバナンスの中心的な存在です。プロポーザルの作成や支持(エンドース)、レファレンダムへの投票、Web3プロジェクトを支援するためのトレジャリーファンドの請求など、ネットワーク運営において重要な役割を担っています。コミュニティが積極的にガバナンスアクティビティに参加することで、ネットワークの分散性が維持され、エコシステム全体にとって最も有益な意思決定が可能となります。

プロポーザルの種類とガバナンスプラットフォームについて

ガバナンスへの参加方法に入る前に、Astarのガバナンスでは、オンチェーンプロポーザルとオフチェーンプロポーザルの違いを正確に理解することが重要です。どちらも現在はSubsquareを通じて管理可能であり、オフチェーンプロポーザルのために従来必要だったTownhallは不要となりました。

オンチェーンプロポーザル

オンチェーンプロポーザルは、ブロックチェーンに直接的な影響を与え、オンチェーンでの実行が必要なプロポーザルです。これらはAstar Governance V1を通じて管理され、SubsquareのDemocracyセクションで操作できます。オンチェーンプロポーザルの例は以下の通りです:

ネットワークパラメーターの変更やランタイムアップグレード トレジャリーの支払い dAppステーキングへのリスティング・デリスト これらのプロポーザルへの投票は、トークンをロックして行うオンチェーンでのアクションが必要であり、ネットワークに直接的な影響を与えます。これらのオンチェーンプロポーザルはDemocracyセクションにて管理されます。

オフチェーンプロポーザル

オフチェーンプロポーザルは、SubsquareのDiscussionsセクションやAstarフォーラムでホストされ、ブロックチェーンに直接影響を与えることはありません。これらはコミュニティの意見を収集したり、オンチェーン実行が必要のないトピックについて議論するために使用されます。オフチェーンプロポーザルの例は以下の通りです:

Astar Meetupの開催地に関する議論や決定 マーケティング戦略やパートナーシップに関するコミュニティ主導の議論 オフチェーンガバナンスは従来、Astar Gov (Townhall)を利用しておりましたが、今後はSubsquareを通じてオンチェーン・オフチェーンの両方を一元管理できるようになりました。オフチェーンディスカッションはSubsquareのDiscussionsセクションで進められます。

Subsquareへの統合によるガバナンスプロセスの効率化

Subsquareを中央集約型ハブとして活用することで、オンチェーンおよびオフチェーンのガバナンスプロセスが効率的かつ目的に即した形で運用されます。この仕組みにより、コミュニティはAstarの進化に意義深く関与できると同時に、より便利な環境で意思決定に参加することが可能となりました。

ASTRトークンホルダーができること

  • オンチェーン実行を伴うパブリックプロポーザルの作成 オンチェーンプロポーザルを作成するには、最低1000 ASTRのデポジットが必要です。プロポーザルがキャンセルされた場合、デポジットはスラッシュ(没収)されます。
  • 既存のプロポーザルの支持(エンドース) 一定量のASTRをデポジットすることで、既存のプロポーザルを支持できます。この行為によってプロポーザルがレファレンダムに昇格する可能性が高まります。
  1. 支持したプロポーザルがレファレンダムに昇格した場合、デポジットは返還されます。
  2. プロポーザルが悪意あるものとしてキャンセルされた場合、デポジットはスラッシュされます。
  3. 支持したプロポーザルが昇格もキャンセルもされなかった場合、デポジットはロックされたままになります。
  • 進行中のレファレンダムへの投票
  • トレジャリーファンドの請求
  • 投票権を他の人に委任する(デリゲーション)

実際のガバナンスアクションの操作方法については Astar documentation を参照ください。

Astar Holders

Conviction Voting(コンビクション投票)

PolkadotのConviction Votingのコンセプトを採用しており、ASTRホルダーがトークンを一定期間ロックするで、自身の投票の比重を強化することができる仕組みが採用されています。ロック期間が長くなるほど、比重の強化倍率(マルチプライヤー)が高くなります。トークンはプロポーザルが可決された場合にのみロックされ、ロック期間が終了するまで解除できません。 基本的なガバナンスのトークンロック期間はdApp Stakingのアンロック期間と同様の9日に設定されております。ロック期間が終了すると、SubsquareまたはPolkadot.jsを通じてガバナンスからトークンをアンロックすることができます。

Astar Governance Lock Periods

dApp Stakingとガバナンス

AstarのネイティブdApp Staking(Substrate)に使用されるトークンは、ガバナンスにも利用可能で、プロポーザルの作成、支持(エンドース)、投票に使用することができます。しかし、現在のところ、Astar EVMでステークされているASTRトークンはガバナンスには使用できません。 また、ガバナンスでのトークンロックは、dAppStakingでのロックとは異なるので、もしトークンをガバナンスとdApp Stakingの両方で同時にロックしている場合、ウォレットからトークンを転送する前に、両方のシステムでアンロックする必要があります。

スリーカウンシルモデル

ガバナンスシステムには、Main Council、Technical Committee、Commnity Councilの3つの主要なカウンシルが存在します。これらのカウンシルは、コミュニティの意思決定が効果的に実行されるように支援と実行を担います。

Main Council

Main Councilは、Astar Foundationの主要なコントリビューターによって構成されており、他のカウンシルのメンバーの構成やメイントレジャリー管理を行います。また、レファレンダムで単純過半数または特別過半数を必要とするプロポーザルを提案することができます。 初期メンバー:6人のカウンシルメンバーで構成されます。初期メンバーはパブリックレファレンダムを通じて交代可能です。 機能と特権: 特別過半数承認、単純過半数承認、または特別過半数反対投票スキームによる外部プロポーザルの作成。 投票フェーズ中のレファレンダムのキャンセル。 トレジャリープロポーザルに関する決定。

Technical Committee

Technical Committeeは、経験豊富なAstar開発者で構成されており、緊急プロポーザルの迅速な処理、有害なプロポーザルのキャンセル、ネットワークの技術的なセキュリティと安定性を確保する責任を担っています。また、Astar Networkのさらなる開発に関する重要な技術的決定を提案する役割も果たします。 初期メンバー構成:3人のコミッティーメンバーで構成され、メインカウンシルによって選出されます。 機能と特権: メインカウンシルからの外部プロポーザルを迅速処理(ファストトラック)または拒否(ビート)。 パブリックプロポーザルのキャンセル。 Astar Network上の緊急メンテナンス機能の有効化または無効化。

Community Council

Community Councilは9人のメンバーで構成されています。このメンバーは、Astar Foundationのメンバーと、Astarコミュニティで積極的に活動するメンバーの両方が含まれます。このカウンシルの目的は、コミュニティ主導の取り組みを通じてAstarの成長を促進することです。また、コミュニティトレジャリーの管理や、Astar独自の仕組みであるdAppステーキングのメンテナンスも担当します。 初期メンバー構成:メインカウンシルがコミュニティの合意に基づいてメンバー指名します。 コアチームメンバー:3名 エコシステムエージェント:3名 コミュニティメンバー:3名 メンバー選出方法: エコシステムエージェント枠:エコシステムエージェントプログラム内で選出。 コミュニティ代表枠: 公募:Astarフォーラムでの応募。 選挙:Astar Gov(タウンホール)での選挙。 機能と特権: 新しいdAppの登録:2/3の合意でdAppステーキングに登録。 dAppの登録解除:4/5の合意でdAppステーキングから解除。 コミュニティトレジャリーの操作:2/3の合意でロック、アンロック、ステーク、アンステークを実行。 コミュニティトレジャリー支出の承認または拒否:2/3の合意で実行。

Public & Community トレジャリー

Polkadotとは異なり、Astar Networkにはガバナンスによって管理される2つのオンチェーントレジャリーが存在します。

メイントレジャリー

Main Councilが責任を持って管理するこのトレジャリーは、Astarエコシステムの成長を目的としており、以下のような用途に資金を提供します: 開発助成金 マーケティング コミュニティ主導の取り組み 流動性の提供 インセンティブ インフラ資金

コミュニティトレジャリー

コミュニティカウンシルが管理を担当するこのトレジャリーは、イベント、マーケティング、アクティビティ、エコシステムエージェントへの報酬、キャンペーンなど、コミュニティの成長と取り組みをサポートするために設計されています。また、Unstoppable Community Grant Programを通じてdApp Stakingプロジェクトも支援します。

トレジャリープロポーザル

誰でもトレジャリープロポーザルを作成することが可能で、対応するカウンシルがそれを承認または却下します。プロポーザルを作成するには、要求額の5%に相当するデポジットが必要で、最低100 ASTR、最大1000 ASTRの範囲内で設定されます。プロポーザルがカウンシルに承認されると、支出期間に進み、実行されるまで待機します。 トレジャリーの支出期間は7日に設定されており、資金は毎週支払われます。

Astar最初のオンチェーンガバナンスプロポーザルに参加しましょう

オンチェーンガバナンスの導入は、Astarとそのコミュニティにとって重要な一歩となります。この旅路を通じて、ガバナンスシステムの安定性と自律性を達成することを目指し、コミュニティの皆さんに向けた最初のプロポーザルを提案します。このプロポーザルにより、投票プロセスへの参加を開始し、実際に体験することができます。

このプロポーザルは、Astar Network上のブロックに「Astar Governance Day 1」という情報をエンコードしています。これは、実質効果のないリマークコールを利用したもので、ブロック内に情報を埋め込むことでブロックチェーン上にAstarとして初のオンチェーンガバナンスアクティビティの記録を残します。本格的なオンチェーンガバナンス始動の前に、最初のステップとして参加する絶好の機会となります。

プロポーザルを確認し、今すぐ投票に参加しましょう ▶️ https://astar.subsquare.io/democracy/referenda/0

最後に

Governance v1は、ネットワークの安定性をと分散性を維持するための仕組みです。このコミュニティ主導のモデルにより、誰もがAstarの未来を形作ることが可能となり、新たな取り組みを支えるネットワークの能力を拡大し、より広範なビジョンの実現に必要不可欠な基盤を提供します。 Governance v1の詳細な技術説明については、以下のAstarまたはPolkadotのドキュメントをご参照ください:

Astar Network Team

Astar serves as the gateway for projects across enterprise, entertainment, and gaming to enter Japan and beyond. Driving global adoption of web3 to millions with an ecosystem powered by Polkadot and Polygon as the industry-leading blockchain for the Japan market.