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Astar Network、メインネットで非同期バッキング(Async Backing)を導入

Astarは2025年6月、メインネットで非同期バッキング(Asynchronous Backing)を導入しました。これは、ネットワークの性能、応答性、スケーラビリティを大幅に向上させる重要な技術アップグレードであり、より迅速かつ効率的なブロック生成プロセスを実現します。これはAstarの開発ロードマップにおける、重要なマイルストーンとなりました。 この機能はもともとPolkadotのリレーチェーンで導入されたもので、パラチェーンがブロック生成とバリデーションを分離し、並列で処理できるようにする仕組みです。その結果、ブロック生成がよりシンプルかつスケーラブルになり、ブロック生成時間が短縮され、スループットが向上し、開発者とユーザー双方にとってより快適な体験が実現されます。

変更点

  • ブロック生成時間が12秒から約6秒に短縮

新しいブロックが生成されるまでの時間が半分になり、ネットワークの応答性が向上し、ファイナリティまでの時間も短縮されます。

  • ブロックごとのASTR発行量が50%減少

ブロック生成時間の短縮により、年間で生成されるブロック数は2倍になります。これに合わせてインフレ率を維持するため、ブロックごとの発行量を半減させ、年間の総発行量は変更されません。

Astar上のすべての期間指定は秒数ではなくブロック数に基づいて計算されるため、ガバナンスロック期間やdAppステーキングサイクルなど、既存の仕組みはこれまで通りに機能します。 Async backing Before After (1).jpg

非同期バッキングの仕組み

非同期バッキングは、パラチェーンのブロック取り込みにパイプライン型の手法を導入することで、ブロックの生成と検証の方法を根本的に改善します。

これまでの仕組みでは、ひとつのブロックが完全にネットワークに取り込まれるまで、次のブロックを生成することができませんでした。しかし非同期バッキングの導入により、「未取り込みセグメント」と呼ばれる、最近提案されたがまだ取り込まれていないブロックの情報を利用して、コレーターは次のブロックをあらかじめ準備できるようになります。これにより、バッキング(承認)と取り込み(記録)が同じリレーチェーンのブロック内で並行して行われるようになり、全体の遅延が大幅に削減され、ネットワークの効率が飛躍的に向上します。

Async Backing illustration (1).jpg

この新しいモデルでは、パラブロックが6秒ごとに生成され、そのうち2秒が実行時間として確保されます。これは従来の4倍にあたり、より複雑な処理や大容量データの取引も可能になります。複数の未取り込みパラブロックが同時に存在できるようになることで、ネットワークの柔軟性とブロックスペースの利用効率が向上します。これにより、コレーターはより早くブロックを提出し、バリデーターも迅速にバッキングを始められるようになり、全体として取り込み速度も上がります。これらすべては、ファイナリティやセキュリティを犠牲にすることなく実現されます。 この結果、ネットワークのスケーラビリティと効率が大きく向上し、トランザクション処理能力は約2倍に、遅延も大幅に短縮されます。これにより、開発者にとってはより柔軟な設計が可能となり、これらの改善はプロトコルレベルで適用されるため、ユーザーや開発ツール側での対応は不要です。

技術的な詳細については、公式のAsynchronous Backing – Polkadot Wikiをご覧ください。

非同期バッキングのメリット

ブロック生成が高速化

ブロック生成時間の短縮により、より迅速な取引確定と、dAppの反応性向上が実現されます。

スループットの向上

複数のパラチェーンブロックが同時に異なる検証段階にあることを可能にすることで、ネットワーク全体のトランザクションおよびメッセージ処理能力が大幅に向上します。

UXの向上

このアップグレードにより、決済、トレーディングプラットフォーム、ソーシャルツール、オンチェーンゲームなど、リアルタイム性が求められるアプリケーションでも、より滑らかな体験が実現されます。開発者は、よりインタラクティブで低遅延のプロダクトを設計可能になります。

Impact Flowchart.jpg

非同期バッキングの重要性

非同期バッキングの導入により、Astarはネットワーク性能の新たな段階へと進化します。これにより、より多くのユーザーや、複雑なdApp、新たなゲームやDeFiといったユースケースに対応できるスケーラビリティが実現されます。この変更は、ステーキングの仕組みやガバナンス期間、トークンのインフレスケジュールには一切影響を与えません。

開発者にとっては、ブロック生成のサイクルが早くなるという重要な変化となります。ブロック数ベースの期間指定は従来通りですが、12秒間隔を前提としたオフチェーンの仕組みは更新が必要な場合があります。スクリプト、バックエンド、モニタリングツールなどの見直しが推奨されます。 このアップグレードはすでにShiden上でテストされ、内部的にも検証されています。Astarで非同期バッキングを有効化するガバナンス投票もすでに可決されました。開発者はShibuyaなど非同期対応環境でのテスト・開発をぜひ進めてください。

このアップグレードは単なる性能向上ではなく、Astarエコシステムの未来への投資です。ともにこの進化を実現していきましょう。

Astar Network Team

Astarは、Astar NetworkおよびSoneiumのエコシステムに貢献することで、Web3の普及を加速させるコレクティブ(集合体)です。Astar Networkは、安全でスケーラブルな環境において、ガバナンスとステーキングを支え、SoneiumはOP Stackを活用し、高速かつ低コストなトランザクションによって、消費者向けおよびエンターテインメント領域のユースケースを推進します。これら二つのエコシステムはASTRトークンによって統合され、DeFi、決済、エンタメを横断するシームレスな相互運用性とイノベーションを実現し、数十億人規模へのWeb3.0普及を目指します。